はじめまして編
西の国はいたって平和です。
次期国王であるアルズ王子は、この日初めて自分の教育係に会うのでした。
アルズの元に、愛想笑いもしない無表情な男性がやって来ました。
実はこの男性が、アルズの教育係に王様から任命された人なのです。
「お初にお目にかかります、若。わたくしはジュナールと申します」
「僕アルズ」
「存じてます」
「いや、そうぢゃなくてさ・・・」
ジュナールはとても無表情な男性でした。
幼いアルズは、ちょっとジュナールの事を怖く感じました。
「わたくしは本日より若の教育係となりましたので、よろしくされて下さい」
「うん、解った・・・って僕がよろしくされるの!?」
「わたくしは若に教える側ですから。何か問題でも?」
「い、いえ、ありません・・・」
自分の方が身分が上なのに、何故か敬語になってしまうアルズ。
このままでは駄目だっ、王子なのに馬鹿にされるなんて駄目だっ、とアルズは
若干弱気ながらそう思いました。
「では若、自己紹介も済んだ事なので、勉強に移りましょうか」
勉強!? 嫌だ!!
アルズは激しくそう思いました。
「えーっ、まだあんまりお互いの事話してないじゃん。勉強より親睦を深める方が
大切だよー」
アルズは6歳の分際で難しい言葉を知っていました。
しかし、ジュナールは言いました。
「お言葉ですが、若」
「なーに?」
「わたくしにとって若の生い立ち等、私生活などはかなりどうでもいい事なので、
親睦より勉強を、ですね」
「普通は自分の生い立ち等を話すのが控えめに出るんじゃ
ないのおおッ!!? 何で位の高い人物を物凄くナチュラ ルにけなしてんだヲイッ!!!」
「言葉遣いが悪いですよ、若。はっ倒しますよ」
「ナニコノヒトーーーッッ!? 王子に向かってナンナノコノヒトーーーッ!!?」
「わたくしはジュナールです。それから、人を指で指さない事」
「くっうう! 急にもっともらしい事言って! パパに言ってお前なんかクビにしてやる!!」
「子供じみた発想に返す言葉もありませんが・・・一先ず返しておきます。どうぞご自由に」
「だって子供だも・・・って、ええッ!? ご自由にしていいの!?」
まさかそう来るとは思わなかったアルズは、子供ながら凄まじい敗北感を抱きました。
ジュナールは言いました。
「陛下はおっしゃってましたから。若を好きにしていい、と」
「何言ってんだあのオヤジわーーーッ!!? ハッ、まさかお前が何か無理矢理そ
う言わせたんじゃないだろーな!? パパの弱みとか握って!」
「・・・・・・・・・まさか」
ジュナールはボソッと呟きました。
「間が長いよ君!!! やっぱ握ってんでしょっ!? 弱みとか腹の脂肪とか!!」
「最後が意味不明です。さあ、もういいでしょう。さっさと勉強を開始しましょう。これ以上
しぶるのでしたら、教育バスターをかましますよ」
「なななな何それ!?」
西の国はいたって平和です。
アルズは立派な王様となるため、今日も勉強に励むのでした。
おわり
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