第18話

 今日から元の生活が始まる。何の変哲も無い、いつもどおりの私の日常が。
「ケイ、ほら見て。別荘で撮った心霊写真!」
 ターナは喜々として、私に写真を見せびらかした。
 景色のいい避暑地にターナの家族が満面の笑みで写真に写っている。でもそのすぐ傍に、
しかもターナの肩の辺りに人の顔らしき影が写っていた。
 確かに霊ね、これは。
 私が見るからに、悪い霊ではなさそう。楽しそうだったからターナ達に近づいた、そんな雰囲
気のある霊だった。
「ケイも心霊写真があったら、絶対に頂戴ね」
「フフ、あったらね」
 苦笑しながら答えた。
 実は、もうあるのよね、心霊写真。
 それは、アルバルトさんの家に泊まった日の翌日に撮った写真。私とアルバルトさんの間に、
ちょっと不機嫌な顔をしたザレオが写ってるもの。
 だけど、ターナにはあげない。私の大切な宝物だから。



『ザレオ、幽霊になった記念に写真でも撮ろうか!』
『頭カチ割られたいのか馬鹿鳩。単にお前はケイと撮りたいだけだろーが』
『なっ・・・ななな何言って、そんな訳ないじゃん!』
『フン、どーだかな。じゃあ早く撮れよ』
『え、えーーーと・・・君、と僕とケイディちゃんのスリーショット撮りたいんだけど・・・』
『はっ、やっぱりケイ目当てじゃねえか』
『い、いいじゃないか別に! 出会いってのは大切なんだぞ! そもそも、何でそうケイディ
ちゃんの事を馴れ馴れしく呼んでるんだよ!』
『うっせーな。どうでもいいだろ。ほれ、撮るなら撮るで早くしろ』



 その時のザレオとアルバルトさんの会話を思い出して、私はこっそりと微笑った。
 怖くて、でも楽しい事もあった夏休み。
 私は、絶対にザレオとの想い出を忘れない。

Fin.

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